人生について

加速していく・・・

周りのすべてを置いていく。
止まる事を知らない。ただ永遠と加速していく。
止まって緩やかな時間に憧れながら
しかし止まっていると何かに怯えてしまう。何か分らない何かに。そしてまたいつの間にか駆け出している。
だからいつも止まれない。

「なんでそんなに急いでいるの？」
やわらかい声が聞こえた。

ふと顔を上げるとその声は向かいの人が発した声だと分かった。

なぜ俺が思っていることが分かるのだろう。いつも焦って毎日を走っていることが分かるのだろう。

俺はいつもゆっくりしている。周りに心の焦りを悟られないように、あえて自分が憧れているゆっくりな時をすごしている。心の中で怯えながら。
　
「急いでいないと落ち着かないのさ。止まれないんだよ」

俺はゆったりと答える。

その人は俺の目を見ると言った。

「マグロみたいな人ね。マグロは泳いでいないと死んでしまうの」

そして窓の外を見つめて

「外はこんなにもゆっくりなのに」

俺もつられて外を見る。緑の木がいくつか見える。道路を歩く子供が虫取り網を持って父親らしき人に手を引かれてる。

「でも焦って急いで何も考えないでいないと不安になってくるんだ。」

そしてタンと立ち上がるとゆっくり俺の前まで来る。
さっきまで座っていた緑の椅子がポツンと取り残される。

ギュっと俺の手を握ると微笑んで

「私もそんな感じで悩んでいた頃があったわ。きっと今の貴方と同じだと思うの。不安でも一度立ち止まって考えてみるといいわ。何が不安なのかをね」
　
そういうと時計を見て、もう時間だわと駆けるように教室から飛び出していった。
同じ年位の人に悟られたような事を言われたな。と思いため息をつき目を閉じた。

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